世間でよく行われている議論「冷やす」VS「温める」
「腰や膝が痛い時に、冷やすべきか?温めるべきか?」
「急性期は冷やす、慢性期は温める、と巷で言われているぞ。」
「冷えて血行が悪いと、関節痛は悪化するらしいぞ。」
「じゃあ、温めたほうがいいんだ!」
ちょっと待ってください!その考えは危険です!
「なんだ、君は?我々の結論にケチをつけるのか!」
私は整体師として10年、リハビリや体操指導もしています。
私の話を聞いてください!
「たかが10年で専門家気取りか?笑わせるな!」
あと、IQが138あります!(模擬テストだけど)
「なんだと!?そ、それは、すごいのか?」
「いや待て、IQとか関係ないだろ・・・。」
「だが、面白いじゃないか。ちょっと話を聞いてやろう。」
ありがとうございます!
ということで、解説させていただきます。
目次
急性期など、炎症があるときは冷やす
まず、「急性期は冷やす」これに異論はありません。
ケガをしたり痛めた直後から、だいたい2~3日は炎症が続きます。
その間は冷却するのがスタンダードです。
「なるほど、では『ギックリ腰』のときも、冷やした方がいいんだな?」
そのとおりです。
ギックリ腰など、痛みが強いときは炎症も強い傾向があります。
その場合は、お風呂も控えてください。
「そういえば、前に腰を痛めたとき、アイスを大量に食べてサウナに行ったんだが。」
なぜ、そんなことを!?
「痛いのは体の内側だと思ったから、内側を冷やすためにアイスを食べ、そして血行を良くするためにサウナに行ったのだ。」
(そんなこと考える人いるんだ・・・)
で、どうなりましたか?
「痛みがヒドくなり、整骨院に行った。院長には叱られた。腹もくだった。」
ですよね。二度としないでください。
ポイント
炎症があるときは冷やす。
炎症が強い・範囲が広いときはお風呂も控える。
慢性期でも、関節を温めるのはリスク
では、慢性期である関節痛はどうするべきなのか?
「我々の関節の痛みは、昨日今日の話ではないぞ!」
「そうだ!もう何年にもなる!」
慢性痛の主な原因は、血行不良などで筋肉が硬くなっているからです。
筋が弾力を失っている状態で無理に動かすと、関節に負荷がかかって痛みが出ます。
また、血流が悪いと神経も興奮しやすく、より痛みを感じるようになります。
だから、血流が悪いと関節痛は強まります。
「では、血行改善のためにも、やはり温める必要があるのでは?」
問題はそこです。
確かに、「冷えでこわばっている」と感じてカイロなどで熱を加えた場合、動きが良くなることはあります。
しかし関節は、構造上どうしても負担がかかりやすく炎症が起きやすい(熱を持ちやすい)性質があります。
いつのまにか関節内で炎症が起きていた場合、症状が悪化してしまう可能性があります。
なので、腰椎や膝関節などの熱を持ちやすい関節は、カイロなどで加温するのは控えたほうがよいと考えます。
サポーターなどで保温するくらいが安全です。
特に膝は動く範囲が大きく、体重もかかるため、熱を持ちやすいです。
膝に水が溜まるのは炎症があるからです。
だから炎症がある間は、いくら水を抜いてもまた溜まってしまいます。
「では、膝に水が溜まった場合は、抜かないほうがいいのか?」
私の師匠はそう言ってましたが、あまりにも溜まりすぎた場合は、抜くのもありだと思います。
水を抜いて圧力が下がれば、動きが良くなります。
その上で、しっかり冷却をして動かすことで、関節の状態が回復していきます。
膝に溜まる水についてはまた別の記事で。
ポイント
関節は熱を持ちやすく、症状が悪化する可能性がある。
関節は冷やして周囲の筋肉を温める
冷やしすぎに注意
「では、とりあえず関節は冷やしておけば、危険はないのだな?」
はい。
ただし、アイスノンや保冷剤は直接あてないでください。
アイスノンなどは0℃以下になることもあります。
人間の細胞は水とタンパク質です。
水は0℃下で固まってしまうので、細胞にとって好ましくありません。
また、皮膚の温度がマイナス4℃になると凍傷が起こります。
アイスノンはタオルで巻くか、厚めの衣服の上からあてましょう。
ということで、氷水がベストです。
氷水なら0℃以下にならないので、細胞の動きが悪くなることもありません。
また、言うまでもないですが、痛い所だけ局所冷却しましょう。
局所冷却とは体の面積の10分の1以下の範囲を冷やすことです。
広範囲を冷やすと、体温に影響が出てしまいますので。
(体温は20℃以下になると心臓などの動きに異常が出る。)
熱中症以外では、局所冷却でお願いします。
関節の周囲の筋肉(筋腹)を温めるようにする
「では、血行を良くするためにはどうすればいいのだ?」
関節の周りの筋肉(筋腹)を温めてください。
「筋腹とはなんぞや?」
筋肉の真ん中・ふくらんでいる所です。
太ももの真ん中・ふくらはぎやお尻のふくらみなどです。
だいたい関節と関節の真ん中あたりが筋腹になります。
「カイロを貼るオススメの場所は?」
膝の場合は、太ももやふくらはぎ。
腰の場合は、お尻や背中です。
肩や首の場合も、背中の少し上くらい(肩甲骨の間)がオススメです。
もちろん、服の上からです。
ヨシダ的には上半身にはあまり貼らず、下半身を中心に貼るのが基本セオリーです。
頭寒足熱ともいいますし、あまり頭や首の近くだとノボせてしまうこともあります。
足湯と同じで、下半身に貼っておけば血流によって全身が温まるので大丈夫です。
あとは色々と試してみてください。
ポイント
関節自体は冷やす。
冷やす場合も冷やしすぎ(0℃以下)に注意。
氷水なら安全。
関節周囲の筋腹を温める。
下半身を中心に、オススメはふくらはぎ・太もも・お尻・背中。
自分の感覚(体からのサイン)を信じる
ここまでが基本的なセオリーですが、最終的には自分の感覚で判断しましょう。
まず、冷やすか温めるかどちらかを試してみて、「なんか気持ち悪い」「症状が強まっている気がする」という場合はやめる、もしくは温と冷を逆にしてみましょう
自分の感覚は体が何を求めているかのサインです。
よく耳を傾けましょう。
市販の湿布に冷やしたり温めたりする効果はない
すでにご存じの方もいらっしゃると思いますが、冷えピタなどで実際の温度は下がりません。
市販の温湿布や冷湿布は、薬品の効果でそう感じているだけです。
「では、貼っても意味がないのか?」
痛み止めの成分などが含まれているので、鎮痛効果はあると思います。
また、心地よいと感じることで脳の興奮を抑え、ストレスを減らす効果は期待できると思います。
ただし、昔ながらの粘土や泥を使った湿布には、気化熱によって患部を冷やす効果があります。
基本的に手作りで、薬局などで市販されているのは見たことがありませんが、整骨院や接骨院などで取り扱っているところがあります。
私の治療院(吉田整骨院)でもこのタイプの湿布を使用しています。
まとめ
・急性期など、炎症があるときは冷やす(RICE処置)
・慢性期でも、関節を温めるのは危険(関節は熱を持ちやすい)
・関節自体は冷やすのが安全(氷水がベスト)
・関節の周りの筋腹を温める(下半身を中心に・頭寒足熱)
・自分の感覚も大事にする(心地よいかどうかで判断)
・市販の湿布に温度変化の効果はない(痛み止めなどの成分は含まれている)
細胞の働きがもっとも活発になる温度は37℃だそうです。
身体を冷やさないように体温をキープし、熱を持ちやすい場所(関節や脳)を上手くクーリングしていきましょう。
参考)
腰痛診療ガイドライン2019
腰の激痛 椎間板ヘルニア・ギックリ腰・すべり症・分離症・圧迫骨折 腰と脊椎の名医が教える 最高の治し方大全 ~聞きたくても聞けなかった150問に専門医が本音で回答! (健康実用) 菊地臣一 ほか
関節・骨を守る295のQ&A事典 NHKきょうの健康