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膝折れとは?
歩行中や階段を下りる時などに「ガクン」と力が抜けたように膝が曲がる。
この現象を膝折れといいます。
これは一瞬のうちに起こるので、そのまま尻もちをついてしまったり転んでしまったりします。
高齢者施設でもよくみられる症状で「膝折れがこわくて歩けない。」という人も多くいらっしゃいます。
一般的には筋力低下が原因と言われており、スクワットなどで太ももの前やお尻の筋肉を鍛えることが基本対策です。
しかし、「筋トレをしてもあまり良くならない。」という話も聞きます。
私の勤めるリハビリ施設でも「筋力が上がってきているのに膝折れの頻度は変わらない。」という方がいました。
確かに筋力が十分にある人でも膝折れすることはあるし、一方で筋力があまりなくても膝折れしないという人もいます。
これはつまり、筋肉だけが原因ではないということが考えられます。
では他に何が問題なのか?
それは、足の裏です。
足の裏の感覚が原因の可能性
足の裏の感覚に問題がある人は膝折れが起きやすい傾向があります。
「ちゃんと踏めていない気がする。」
「綿(ワタ)を踏んでいるような感じがする。」
「足の裏に何か貼り付いている気がする。」
など
足の裏の感覚が鈍い人は、地面からの反発をしっかりと感じることができません。
ピリピリと痺れを感じることもあります。
踵(かかと)の感覚が重要
足の裏でも踵(かかと)の感覚が鈍いと膝折れしやすいです。
人間は足の裏の感覚によって脳が反応し、身体をコントロールする仕組みになっています。
まず、踵が地面につき反発力を感じると、脳が足を真っ直ぐにしようと反応します。
一方で、つま先に圧力を感じると膝を曲げるように反応します。
では、足の裏全体が地面に接している時(体が地面と垂直)を見てみましょう。
もしこの時に、踵の感覚が鈍くつま先からの感覚しか感じられなかった場合、脳は膝を曲げるように反応してしまいます。
すると、「ガクン」と膝の力が急に抜けたようになり「膝折れ」が起きてしまうわけです。
体がストンと下に落ちるので「尻もち」をついてしまう形が多くなります。
【注意】
つま先の方の感覚が鈍い人でも膝折れすることはあります。
このタイプの人はつま先の感覚を気にするあまり、つま先にばかり意識が向いてしまいがちです。
すると結果として踵の感覚が薄くなってしまい、同じように膝折れしてしまいます。
基本は踵の感覚が問題ですが、このようなケースもあるので注意が必要です。
なぜ足の裏の感覚が鈍くなるのか?
それは、神経に問題があるからです。
神経とは頭からの命令を筋肉に伝える電線みたいなものです。
この神経が傷ついたり潰れていたりとストレスを受けている場合、筋力が十分でも体を上手く動かせなくなります。
脳からの距離が遠い手や足先に問題が生じることが多いです。
脳卒中によるマヒや腰痛・ヘルニア・脊柱管狭窄症・腰の変形など、背骨に慢性的な症状がある人が該当します。
膝折れをふせぐためには
以上の原因から膝折れを防ぐための対策は4つ
①踵の感覚を意識する
②足の裏の感覚を鍛える
③神経の状態を回復させる
④膝折れが起きやすい条件を把握する
順番に解説します。
①踵の感覚を意識する
まずはどちらの場合でも、踵の感覚を意識することが重要です。
地面を踏み込む時に踵からしっかりと着けることを意識し、踵に注意を向けることで太ももの筋肉が働いてくれるようになります。
②足の裏の感覚を鍛える
足の裏の感覚を鍛えることも有効です。これは、バランス力を鍛えることにも直結します。
バランスマットなどを踏んだり上に乗るバランストレーニングには、足の裏の感覚を鍛える効果もあるようです。
振動マッサージ機などの足裏への刺激も効果がある可能性があります(はっきりとしたデータはない)が、使いすぎて足を痛めている人も散見されます。用法・用量を正しく守ってお使いください。
③神経の状態を回復させる
根本的な解決策は神経そのものを回復させることです。
変形やヘルニアなどで腰の神経が圧迫されている場合は専門家に治療を受けたり、運動療法(体操やストレッチ)で神経のストレスを取り除きます。
脳梗塞などで神経そのものが途切れてしまっている場合も、治療や運動療法は有効です。
筋肉をほぐしたり骨格を矯正し血流を改善させ、運動で刺激を与えることで徐々に神経が通うようになります。
(とても時間はかかりますが。)
④膝折れが起きやすい状況を把握する
どんな時に起こるのか?
どんな動きで起こるのか?
膝折れが起きやすい状況を把握しておくことも重要です。
「いつ起こるかわからないから不安なんだ。」という声もよく聞きますが、まったく傾向がないわけではありません。
まず、疲労で起こりやすい傾向があります。
強めのトレーニングをしたり、たくさん歩いた後、寝不足の時なども注意しましょう。
次に、方向転換や階段を降りる時です。
方向転換は片足立ちでつま先に重心が寄っていることが多いです。
体と脳のメカニズム的に膝折れがしやすい動作です。
また、階段を降りる時にもつま先からついてしまう方が多いです。
様々な事情で仕方がないのですが、これも膝折れがしやすい動作に該当します。
ということで、階段の踊り場付近が要注意です。
「階段を降りていて方向を変えようとして膝折れした。」と、来院している患者さんやリハビリデイの利用者さんからも報告がありました。
手すりがあれば絶対に使ってくださいお願いします何でもしますから。
介助方法
膝折れは一瞬で骨盤が真下に落ちることが多く、介助がとても困難です。
・後方から脇の下を両手で支持
・ズボンのウェスト部(ベルト)を両手で把持
要するに、胴や骨盤に常に手をあて支えておくしかないようです。
なかなかシビアですが他に方法も見当たりません。
まとめ
【原因】
・膝折れの原因は筋肉だけではなく神経に問題がある可能性
・足の裏(とくに踵)の感覚が鈍いと膝折れしやすい
【対策】
・踵の感覚に意識を向ける
・足の裏の感覚を鍛える(バランスを鍛えることにもなる)
・根本的に神経の状態を改善する
・疲労で生じやすい傾向を認識する(睡眠も大事)
・方向転換と階段を下りる時に注意(踊り場のある階段は要注意)
【介助方法】
・胴や骨盤を支えておくしかない
もちろん筋力トレーニングも大事です。足の筋肉をきたえておいて損はありません。
しかしそれでも状況が改善しない場合もあります。
これをお読みになっているあなたは、色々な可能性を考慮していらっしゃる方ですね。
この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。